小満とは その意味 「少し満足」説はただのデタラメ!?

小満とは二十四節気の一つ。

その意味ですが、この頃は陽気もよくなり草木などが茂り始める時期で「万物が成長し次第に満ちてくる」ことから「小満」と呼ばれています。

しかし実はこれにはもう一つの説があり、それは麦に穂が付き始める頃なので、それを見た人々が一安心し「少し満足」つまり「小満」となった、というものです。

確かに「小満」という文字からはそう連想する事ができますし、普通に聞けば「そうなのか」としか思わないでしょう。

ですが私はこの説をただのデタラメだと考えています。

 

 

小満とは 「少し満足」はデタラメ

二十四節気は農作業の目安

この「少し満足」説がデタラメだということを証明するには、まず二十四節気とはどういうものなのかを先に説明しなければなりません。

現在は太陽の運行を基準にして1年を決めていますが、昔は月の満ち欠けで1年を決めていました。

季節というのは太陽の運行が影響するので、現在の暦は季節と一致します。

しかし月の満ち欠けの周期は約29.5日ですので、少しづつズレが生じ、暦が季節と一致しなくなってくるのです。

ですがそれでは暦を頼りに農作業の時期を決めるのに支障が出てきます。

ですので季節を24等分に分けた二十四節気という季節の指標を暦に入れ、色々な農作業の目安にしたのです。

そして小満は現在の5月21日前後にあたり、農家の人たちが田植えの準備を始めるための目安でした。

自然の様子と人間の感情

では他の二十四節気の意味もざっと見てください。おそらく小満だけに何か違和感を感じると思います。

  • 立春(りっしゅん)2月4日頃 春の始まり
  • 雨水(うすい)2月19日頃 雪が雨に変わり雪が解け始める頃
  • 啓蟄(けいちつ)3月6日頃 冬ごもりしていた虫たちが顔を出す頃
  • 春分(しゅんぶん)3月21日頃 昼と夜の長さがほぼ同じになる
  • 清明(せいめい)4月5日頃 万物が清らかで生き生きする頃
  • 穀雨(こくう)4月20日頃 春の雨で作物が潤う頃
  • 立夏(りっか)5月5日頃 夏の始まり
  • 小満(しょうまん)5月21日頃(人々が少し満足する頃?)
  • 芒種(ぼうしゅ)6月6日頃 穀物の種がまかれる頃
  • 夏至(げし)6月21日頃 1年で最も昼の時間が長い
  • 小暑(しょうしょ)7月7日頃 少しずつ暑くなる頃
  • 大暑(たいしょ)7月23日頃 夏の暑さが本格化する頃
  • 立秋(りっしゅう)8月7日頃 秋の始まり
  • 処暑(しょしょ)8月23日頃 暑さがおさまる頃
  • 白露(はくろ)9月8日頃 草花に朝露が付く頃
  • 秋分(しゅうぶん)9月23日頃 昼と夜の長さがほぼ同じ
  • 寒露(かんろ)10月8日頃 草花に冷たい露がおりる頃
  • 霜降(そうこう)10月23日頃 早朝に霜がおりる頃
  • 立冬(りっとう)11月7日頃 冬の始まり
  • 小雪(しょうせつ)11月22日頃 雪がまだ多くない頃
  • 大雪(たいせつ)12月7日頃 雪が本格的になり始める頃
  • 冬至(とうじ)12月21日頃 1年で最も昼が短い日
  • 小寒(しょうかん)1月5日頃 寒さが厳しくなる頃
  • 大寒(だいかん)1月21日頃 1年のうちで最も寒い頃

見て頂ければ分かるように、すべての二十四節気は「季節や自然の様子」を表したものなのです。

ではなぜ小満だけが少し満足などという「人間の感情」になるのでしょうか。

先ほども言いましたが、二十四節気の本来の目的は「農作業の目安」です。

だとすれば、少し満足なんてあやふやな人間の感情が農作業の目安になるなんて事はどう考えてもおかしい。

特に小満は田植えの準備を始めるためのとても大切な目安ですので、人の感情がその基準になること自体すごく不自然なのです。

「少し満足」説はどこから生まれたのか

ではこの「少し満足」という説はどこから生まれたのでしょうか。

図書館や古本屋などで色々な文献を調べてみましたが「少し満足」説を唱えている本は全て2000年以降のものです。

それ以前のものでそういった記述のある書物は1冊もありませんでした。

2000年以降と言えばインターネットが一般的になった頃とほぼ同時期です。

それを考えると、おそらくどこかの有名サイトがこういったデタラメを記述していたために、それを何も疑わずに他のサイトやブロガーたちが引用し徐々に広まっていったのでしょう。

そしてそのネット情報をそのまま使用し、その後の書籍も出版されたのだと思います。

こういった本はそれほど多くはありませんが、ネットの小満に関する記事のほぼ半数以上は「少し満足」といった説明をしているのが現状で、大手のニュースサイトでさえもそうなのです。

小満は本来「万物が成長し次第に満ちてくる」という自然の様子を表したものですが「少し満足」とした方がキャッチーで分かりやすいために、こんなに広がってしまったのでしょう。

そしてこの説が広がったのは、おそらくこの記述からだと思われます。

5月21日頃 小満とは秋に蒔〔ま〕いた麦などの穂がつく頃で、ほっと一安心(少し満足)すると言う意味です。 田畑を耕して生活の糧〔かて〕を稼いでいた時代には、農作物の収穫の有無は人の生死にかかわる問題でした。そのため、麦などに穂がつくと「今のところは順調だ、よかった」と満足したことから小満と言う名前が付いたようです。

なお、このサイトの「小満」の説明ページには参考文献が載っています。

そして私はそれらも全て調べたのですが、やはり「少し満足」などという記述は一切なかったのです。

このサイトはある会社が運営しているのですが、そこは小中学生向けに日本の伝統や文化を伝える書籍も発行しているようなところです。

どういった経緯でこうした記述をしたのか全く分かりませんが、ただ間違った情報がいつのまにか真実になってしまうことを考えると、ネットは本当に怖いな、と思わずにはいられません。